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【退廃市場0】「邂逅」上巻

退廃市場0で展示した
iPhoneで自分で撮影した小さな写真と文章のアルバムです。
「邂逅」
2016.7.31-8.27
横浜中華街廃道楽 「退廃市場0」に向けて。
【上巻】
あの日貴方は、煙草を買いに
ふらっと出て行ったまま
ついに戻って来ませんでしたね。
きっと新しい女にでも声を掛け、また押し掛けて棲みついたのか
久しぶりにお家に帰ってしまわれたか
私は気にも留めませんでした。
何時もの事、のはずでした。

或る日、風の噂で
貴方が河向うへ逝ってしまわれたと、うかがいました。
じき四十九日と。
私は、見送ることを許された女ではない事はよく分かっています。
貴方がどこで眠るのかすら
知る由はありませんね。
貴方がついに本当の名前を明かして下さることは無かった。
そういう事なのです。

貴方は興が乗ると筆をとり
私の姿を紙に描き写したり。
雁字搦めにしてはその肢体を、
フィルムに収めたりなさいましたね。
けれども、貴方はご自分の姿を
ついに一枚もお残しにならなかった。
お前の産毛は桃のようだと
貴方は節くれだった指で
毎日毎夜、撫でさすって呉れましたね。
逆立つ産毛の下の薄皮は
これだけの肉と滴りを隠していました。
爪を立てる度、泉が指をけがして
貴方はその度にそれを突き立て、
私自身の舌で浄めるよう仰いました。
私は今、貴方に捧げた桃だけを口にして
生き永らえて居るのです。
いつしか雨戸の隙間から
ひとひらの蝶が迷い込んでしまって
苦い水を舐めながら
私の孤独を笑っている様で
私が紅をひこうが、粉を叩こうが
気にする様な人は、何処にも居ない。

このままもう逢えないのなら
貴方様が生きていようが死んでいようが
私が生きていようが死んでいようが
同じ事でしょう?
身体を焼く程の
業火でなくても
ただ
貴方様の意思を
感じてみたかった
愛されて居たかった
けれど

ありがとう
あの人が遺して下さったもの
教えてくれるなんてね
彼方と此方はまだ
貴方様と私はまだ
繋がっていて呉れるのですか?
【下巻へ】

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プロフィール

巡(めぐる)

Author:巡(めぐる)
緊縛手鏡、四十八手縄入巾着、逢瀬の簪、堕ちた花弁シリーズ(蝋燭を封入したアクセサリー)をはじめとした
緊縛、和のSMがモチーフ布小物、アクセサリーを製作販売しています。
通販 http://megukinbaku.thebase.in
官能の記憶と期待を、日常に。
この世の全ては、秘するが花。
お品を介した、あなたと、私の秘密です。

緊縛イベントをはじめとしたフェチ系イベント、
美術展などのレポート
着物のこと
日記など。

稀に、緊縛モデルをつとめます。

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